フラッシュ型教材を使い始めて約7年になる、3年生を受け持つ土方奈緒美先生は、目的に応じてさまざまなフラッシュ型教材を使い分けており、その答えさせ方も、バリエーションに富んでいる。
稲城市立長峰小学校
多摩ニュータウン稲城地区の3校目の小学校として創立。土方先生を中心に、若い先生からベテランの先生までフラッシュ型教材を活用した授業に取り組んでいる。
〒206- 0821 東京都稲城市長峰2- 8
TEL 042- 331- 3111
FAX 042- 331- 6655
URL http://academic 3.plala.or.jp/naga-e/
3年生国語・「カンジー博士の音訓遊び歌」
『小学校のフラッシュ くりかえし漢字ドリル』で漢字練習(約15分)
- 新出漢字の読みを全員で練習。全10 問× 4種。
- 漢字ドリルで、今練習した漢字の読みを書く。
- 3年生の既習漢字を復習。列ごとにタイムを計測し、競争。
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自作のフラッシュ型教材で本時の教材文を読ませ、課題を把握させる(約5分)
- 本時に学ぶ教材文を1文ずつ表示するフラッシュ型教材で読ませる。
注目させたい箇所の文字色を変え、本時のねらいに子どもが気づくようにも工夫。 - 繰り返し読ませて、本時の課題を把握させる。
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本時の学びへ
- 1つの漢字の音読み訓読み両方が入った「音訓遊び歌」を子どもに作らせる。
漢字練習だけでなく、教材文の読解にもフラッシュ型教材が活躍
「学ばせたいことや子どもの実態に合わせて、市販教材・自作教材を使い分けています」という土方先生。国語の授業は、『フラッシュ くりかえし漢字ドリル』からスタートした。
「教科書に出てくる新出漢字の読みを練習しました。金曜日に漢字テストを行うので、月〜木はフラッシュ(型教材)で繰り返し練習して、読みを定着させています」
土方先生はフラッシュの合間に、漢字ドリルに「書く」活動も入れている。読むだけでなく、書くことでより確かな定着を図っている。そして、列対抗のタイム競争が続く。各列起立して前から一人1問ずつ答えていき、全10問の所要時間を土方先生が計測し、タイムを黒板に書き出す。
「競争心を刺激し、真剣に取り組ませるのがねらいです。自分がもたもたしていると列全体のタイムに響くので、子どもにはかなりのプレッシャー。だから真剣味が増すし、間違えた問題は強く記憶に残り、忘れません」
一人ずつ答えさせることで、定着度も正確に把握できる。緊張しすぎて答えられない子どもへのフォローも忘れないようにしているという。漢字練習が終わったら、今日の学びに直結する自作フラッシュの出番だ。教材文をじっくり読んでその特徴に気づかせるために、一文ずつ表示するフラッシュを自作したそうだ。教科書を読ませた場合は注意が散漫になることもあるが、これなら目の前の一文に集中できる。子どもは教材文の特徴を発見し、本時の学びへスムーズに移行した。
ジェスチャー付きで体で覚える。二人一組の競争で集中力も高まる
土方先生は、理科の授業でもフラッシュ型教材を活用している。最初は口頭だけで答えさせた後、○×や「引き付け合う・しりぞけ合う」ジェスチャー付きで答えさせていた。
そして、フラッシュに慣れた頃を見計らい、二人一組で早く正確に答える競争も行った。授業の最後には、「棒磁石の端を磁石の( )という」といった穴埋めフラッシュで、この単元に不可欠な事柄の定着を図っていた。eTeachersからダウンロードした教材を、本校で使う教科書の語句に合わせてアレンジしたそうだ
フラッシュ経験約7年で学んだ使うコツとポイント
フラッシュ型教材を使い始めて約7年。土方先生は経験を積むにつれ、使う場面や答えさせ方を工夫できるようになったという。
「昔は、授業の冒頭で、覚えさせたい事柄をフラッシュで読ませる活動がほとんどでした。今は授業の冒頭だけでなく、その日の学びを復習するために授業の終わりでも使います。また単元の学びの導入で使うこともあります」
答えさせ方も全員で答えるだけでなく、列ごと、一人ずつ、ペアでなど、いろいろなバリエーションを用意。ジェスチャーを取り入れたり、ドリルなどで「書く」活動も併用している。フラッシュ型教材を使えば使うほど活用のアイデアが湧いてくるという。
目的や場面に応じて教材も使い分けている。漢字や九九などは、『フラッシュ基礎・基本』を使用。単元の導入やまとめ学習をさせたいときは、自作教材やeTeachersからダウンロードした教材をアレンジして使う。
「目的を明確にし、その目的に合ったフラッシュを選ぶことが大事。あれもこれもと欲を出すのではなく、シンプルに活用することが鉄則ですね」
土方先生の影響を受けてフラッシュを使い始めた若い先生に、助言することも多い。2年生に九九を練習させている先生に「リズムよくできない」と相談されたときは、こう助言した。
「子どもが間違えるたびにフラッシュを止めず、間違える子どもがいてもいいから、止めずに最後まで一気にやってみようと助言しました。誤答のたびに止めていてはリズムが悪くなり、子どもの集中も途切れ、時間もかかってしまいます。『この問題を間違える子が多いな』『この問題はもっと練習が必要だな』と、頭にしまっておく。そして今後の活動に活かせばいいのです」
若い先生の力を伸ばすためにも、フラッシュ型教材を活用したい
校長 植松 辰夫先生
本校は若い先生が多く、若い先生の指導力向上が課題となっています。そこで「若手育成研修」を毎月開催し、経験豊富なベテランの先生方が、自分の得意な教材や指導案を若い先生に紹介しています。その内容は道徳の授業案から学級経営のコツまで様々ですが、土方先生はフラッシュ型教材を紹介してくれました。2011年度に全教室に大型テレビがそろって環境が整ったこともあり、フラッシュ型教材を使う先生が増えてきています。
フラッシュ型教材は、繰り返し練習して暗記する必要がある事柄の定着に効果がありますね。都道府県名や九九、漢字の学習で、特によく使われています。短い時間の活動を繰り返すことで、知識がしっかりと定着しています。
若い先生方は、子どもの頃からICTに慣れ親しんでいるので、ICTへの抵抗感が少ない。若い先生の指導力を伸ばす手段として、ICT活用は有効だと思います。