中野区立向台小学校では、1年生から6年生まで、全学年で英語活動を実施している。ALTも頻繁に来てはいるが、同校の英語活動は「担任中心」がモットー。そのために、英語教育の専門家を招くなどして校内研修を重ね、各学年に合った授業案や指導方法の研究、教材開発を平成17年前から行ってきた。そんな向台小では、『小学校のフラッシュ英単語』をどのように活用しているのだろうか。
正しい発音を繰り返し聞かせてあげられる喜び
「この教材のは、ネイティブの音声がすべての英単語や表現に付いていることですね!」
加藤明恵先生に『小学校のフラッシュ英単語』シリーズの良さを尋ねたところ、にこやかにこう即答してくれた。
「先生方が英語活動で一番気にしているのは、発音なんです。やはり、正しい発音、ネイティブに近い発音を教えてあげたい。でも、私もそうですが先生方は発音に自信がない。ALTも来てくれますが、英語が母国語でない人もいますし、国によって発音が違うんですよね。でもこの教材なら、ネイティブの正しくてキレイな発音に触れられる。子どもだけでなく、教師も発音を学べる。そしてALTがいないときでも、正しい発音を勉強できる。これが一番のメリットですね」
工夫次第でさまざまな使い方ができる
「この教材は、いろいろな使い方ができるのも良いですね」
この日の授業でも、『小学校のフラッシュ英単語』はさまざまな場面で活用されていた。
まず授業序盤には、国旗を見て国名を答えるフラッシュを使用。繰り返し答えさせて国旗と国名を把握させた後、加藤先生はクイズを出題し始めた。
「どの国でしょうか? It’s famous for kangaroo.」と、カンガルーが描かれた紙のフラッシュカードを見せながら加藤先生が問うと、子どもは"Australia!"と即答。"It’s famous for baseball."の問いにも、"America!"とキビキビ答えていた。フラッシュ型教材で基本的な英単語や英語表現の定着を図りつつ、これをきっかけに各国の特徴について学ぶ活動につなげているのだ。
また授業終盤には、「行きたい国」を尋ね、答える『フラッシュ英語表現』を使用。教材から流れる"Where do you want to go?""I want to go to NewZealand."等の例文を繰り返し聞いて発音練習した後、インタビューゲームに突入した。"Where do you want to go?"と質問し合い、"I want to go to China."などと答えるのだ。
「最初に発音練習しておくことで、インタビューゲームをスムーズに行えるようになります。相手の英語を聞き取れなくても、『行きたい国を聞いてるんだな』と何となくわかるし、前に学んだ例文を思い出しながら、"I want to go to America."と、自分なりに回答できるのです。活動の導入や例文の練習など、この教材は工夫次第でいろいろな使い方ができます」
今までの授業方法や指導方法にこの教材はフィットする
いろいろな使い方ができる。この事実には、大きな意味が隠されている。
向台小では、英語活動の研究を5年積み重ねてきた。授業・教材研究を繰り返し、カリキュラムも策定。1・2年生は年間16時間、3・4年生は20時間、5・6年生なら25時間分の詳細なカリキュラムを作っている。たとえば6年生のカリキュラムなら、自己紹介、時刻、計算、場所、買い物、健康、国際交流、職業など、年間25時間分の学習単元テーマを設定し、各単元ごとに主に扱う表現や使用する曲、ゲームなども決めている。そして英語活動が行われる国際理解教室には、フラッシュカードなどの膨大な教材が、分野ごとに整理されて籠に積まれている。授業内容や教材が確立されたこの状態に、昨年度から『フラッシュ英単語』が新たに加わったのだが、既存のカリキュラムや教材群を”邪魔“することはなかったという。
「これまで培ってきた授業案や教材に、すんなりフィットしましたね。授業内容や指導方法は、今まで通り。そういう意味でも、使いやすい教材ですね」
授業の中心は、あくまでも担任コミュニケーション活動を大事に
そして『フラッシュ英単語』は、向台小のモットーである『英語活動は担任中心』にも、スムーズに溶け込んだ。
「この教材はとても便利ですが、授業の中心はあくまで担任教師。授業でも、『フラッシュ英単語』に頼りすぎることなく、うまく利用しながら子どもとの対話やコミュニケーションの場面を作るように心がけています。子どもの顔を見ながら、指導したいんです」
この日の授業でも、『フラッシュ英単語』は導入や練習目的で使われ、その後には必ず、「教師対子ども」「子ども対子ども」のコミュニケーション活動が行われていた。向台小の英語活動は、「コミュニケーション能力の育成」が目的。英単語や例文を学ぶのも、外国の方と触れあい、意思疎通し、自分の考えを表現するためなのだ。
「育みたいのは、『コミュニケーションしようとする姿勢や態度』。外国の方が相手でも、物怖じせずにコミュニケーションしようとする姿勢や態度を養いたいのです」
その成果は、この日の授業でも垣間見えた。前述のインタビューゲームが始まると、子どもたちはこの日見学に訪れていた他の先生方や我々取材陣に駆け寄って、"Where do you want to go?"とニコニコしながら質問してきたのだ。その積極性には、驚かされた。
「子どもたちは、英語活動を心の底から楽しんでいます。私も、楽しんでいます。実は私も、元々は英語は苦手でしたし、大嫌いだったんです(笑)。でも、今の英語活動はやっていて楽しいですよ。今後は模擬授業などを行って、他の先生方にも『フラッシュ英単語』をどんどん薦めたいと思います」
『フラッシュ英単語/英語表現』は、文部科学省から配布された『英語ノート』にもうまく対応しており、この点も、先生方には利用しやすい教材と言えるだろう。
英語活動の時間以外でも
日常的に英語に親しませる
向台小では、日常的にも英語に親しめるよう、全教室にこういった英語カードを置いている(写真)。
「英語は毎日繰り返し触れさせることが大切。授業で学ぶこととは別に、どんな英語に毎日触れさせればいいかを検討し、こういったカード教材を作りました」
この教材を使い、朝の会で英語の簡単なプラクティス(月名や天気、曜日名、数字など)をしているクラスもあるとか。加藤先生も、教科授業のちょっとした場面で、英語を使うように心がけているそうだ。
「プリントを渡すときに"Here you are."と声をかけたり、子どもからワークシートを回収する時に"Thank you."と言ったりしています。こうすることで子どもは、『こういう場面で、こういう英語を使えばいいんだ』と体感的に学べるんです」