―石川県―
金沢市教育委員会 / 金沢市立中村町小学校
石川県の中核都市である金沢市では、「金沢型学習プログラム」として市立小・中学校の基準となる学習内容を明示し、高い学力を持つ子供を育てている。2025年度からは「デジタル科」を新設。小学校ではプログラミング、中学校ではデータの利活用に取り組むなど、さらに教育のDXを進化させていく。また校務のDXに関しても、先生方の校務を効率化し、授業に専念出来る環境作りを目指して、積極的な取組みを行っている。
様々なデータの「可視化」を進める
金沢市では、チエルが提供する「教育DX推進支援サービス」をデータ可視化の基盤とするとともに、Webフィルタリングツール『InterCLASS®Filtering Service』と、そのオプションサービスである『フィルタリングダッシュボード』を導入。通信状況やフィルタリングのログ、各学習系アプリやデジタル教科書の使用ログなど、様々なログを用いて「教育データの利活用」を進めている。
例えばダッシュボードのLooker Studio でログを見れば、各サイトへのアクセス履歴、フィルタリングでアクセス規制されたサイトなどが一目瞭然。Google Workspace for Education のログイン状況や各種サービスの利用率、デジタル教科書のアクセス数なども、データで見ることができる。 「各学校のネットワークやアプリの利用状況を、正確に把握できるようになった。見えなかった部分を、可視化してくれた。市が予算をかけて導入したサービスを、実際にどのぐらい利用しているかを数値で把握できるのは、たいへんありがたい」と、金沢市教育委員会の吉田氏はいう。
今まではこうした利用状況を確認するために、学校へのアンケート調査を行っていた。しかしアンケートはどうしても主観が入った回答になるため正確に把握するのは難しく、アンケートへの回答が先生の負担になる問題もあった。ダッシュボードを使えば、先生方に負担をかけることなく、定期的かつ定量的に把握できる。
現在は教育委員会のみダッシュボードのデータを閲覧できるが、今後は各学校でも見たい時に見られるようにできないかと考えている。「各学校でデータを見られるようになれば、先生方自身が現状を把握しやすくなるのではないか」と、吉田氏は期待を寄せている。
Google Workspace for Education を活用し、校務のDXも進める
教育データの利活用だけでなく、金沢市ではチエルのDXツールを活用し、学校主体で校務を効率化できる取り組みも進めている。その一つが、週案作成のデジタル化だ。
金沢市では、伝統的に「週案」を重視してきた。金沢市が制定した全小・中学校共通の年間指導計画「金沢ベーシックカリキュラム」を元に、現場の先生方は目の前の子供たちに合わせて各教科ごとの学習内容や課題などを考え、毎週「週案」を作成している。
この週案作成には、かなりの時間を要する。特に若い先生は、教科書やカリキュラムの内容を読み取りながら課題などを考えるため時間がかかる。「これまではエクセルで作られた学校独自の週案を職員室にある校務用端末で作成するしかなく、『時間と場所』の制約が大きく不便だった」と、金沢市立中村町小学校の澤野先生は振り返る。具体的には、図に挙げたような悩みがあったという。
そこでDXツールの「週案・時数計算ツール」を導入。これはGoogle スプレッドシート™を使って、クラウド上で週案を作成できるツールで、時数も自動計算してくれる。これによって、先生方の負担は大きく軽減された。
週案作成にまつわる悩みと課題
- 職員室にある校務用PCでしか、作成も閲覧もできない。そのため週末になると、夜遅くまで職員室に残り、来週の週案を作るのが常態化していた。さらに特別支援学級の担任は、通常学級の週案が完成してからそれを元に自分の週案を作成するため、土日に出勤して作業せざるをえないことが多かった。
- オンライン上で週案を共有できないため、指導担当の先生にチェックしてもらうのも対面中心で、時間と場所が限定される。
- 週案のフォーマットは学校ごとに独自に作成していたため、異動した先生は慣れるのがたいへん。フォーマットを作成した先生が異動でいなくなると、メンテナンスが困難になる問題も。
導入による成果
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教室や自宅で、週案を作成・閲覧できるようになった
クラウド上で週案を作成できるようになったことで、「夜遅くまで職員室に残ったり、土日に出勤しなくてもよくなった」と澤野先生。教室でも週案にアクセスできるので、「ちょっとした隙間時間に週案作成を進めたり、今日の授業で見えた課題を週案にすぐ書き込めるようになった」という。
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リンクや資料を添付できる
資料となるpdfや外部へのリンクを週案に添付できるようになった。例えば授業をしながら週案を開き、リンクや資料を見せたりできる。
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先生間で共有できるようになった
「先生同士で週案を共有できるようになった。例えば担任がお休みした時、代わりの先生は週案を見てサポートに入りやすくなった」と澤野先生。将来的には、指導担当教諭のチェックをクラウド上で行うことも考えているという。「いつでもどこでも誰とでも、週案を作れるようになった」と、教務主任の關口先生は評価する。
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学校現場にあった使いやすさ
中村町小学校の先生方の意見を聞きながら、ツールを開発。文字の大きさや欄の大きさも、先生方のニーズに合わせて調整するなど、使いやすさを追求した。
先生方のために、教育のDXを進める
教育のDXを進めるのは、先生本来の仕事により一層注力してもらうためだと、金沢市では考えている。「先生方の負担を少しでも減らし、先生本来の役割である授業作りや子供たちとの時間に専念できるように、教育のDXを進めていきたい」と、展望している。そして「教育のDXを進めるために、民間の力も借りていきたい」と、關口先生は言う。
「週案・時数計算ツールのようなツールを、自分たちで作るのはとてもたいへんです。民間企業と連携し、製品を活用することで、より効率的に効果的に、教育のDXを進められると信じています」
金沢市教育委員会 学校指導課
デジタル・学力向上係
主査
吉田光先生
金沢市立中村町小学校
教務主任
關口 悟先生
金沢市立中村町小学校
GIGAスクール推進リーダー
澤野 駿太先生