Case Studies

「二次離島」の小中学校からでも他県や海外との交流が可能に

―長崎県―
五島市教育委員会

グローバル人材育成を目指す五島市教育委員会は、以前から注力してきた英語教育にもICTを活用し、他県との児童生徒間の交流学習やALTの先生経由で海外との国際交流を図り、英語力向上を強化している。五島市が目指す教育体制や離島が抱える課題、学校統廃合に関する施策などを聞いた。

「二次離島」の小中学校からでも他県や海外との交流が可能に
五島市教育委員会

五島市教育委員会
〒853-8501
長崎県五島市福江町1-1
TEL: 0959-72-7801

悪天候による欠航時もオンライン授業で単位認定

 九州の最西端、長崎県の西方海上約100kmに位置し、10の有人島と53の無人島で構成された五島市には、小学校14校、中学校11校、うち小中併設校が4校ある。

 本土と直接つながる交通手段がない二次離島の小中学校では、すべての教科の教員をそろえることが難しい。そのため、五島市の本島である福江島に在籍する教員が二次離島の教員を兼務しているが、台風などの天候条件でフェリーが欠航すれば、これまでは授業を別日に振り替えて対応しなければならなかった。

 「近年は、GIGAスクール構想によって1人1台端末が整備されたり、文部科学省の遠隔教育特例校制度が制定されたりしたことで、通常は授業時数としてカウントされないオンライン授業も申請が認められた学校に限り単位認定されることになりました。五島市でも、二次離島の中学校2校が遠隔教育特例校の認可を受け、オンライン授業を通常授業とみなす体制が整っています」(五島市教育委員会 学校教育課 藤尾和朗指導主事)

 ICT環境が整ってきたことで、二次離島の小中学校の児童生徒も気軽に他校との意見交流ができるようになった。例えば、五島市立久賀小中学校と奈良県天理市立福住小中学校の中学生は、英語の授業で Google Meet™ を活用した交流学習を複数回実施している。「もちろん、五島市の二次離島同士や福江島と二次離島の学校間での交流学習も盛んです」(藤尾氏)

注力する英語教育でもICTを積極的に活用

 五島市では、2014年度から英語教育に力を入れる独自事業「プロジェクトG」を推進している。市内すべての小学校を教育課程特例校に位置付け、小学校1年生から英語教育を継続することが狙いで、外国語指導助手(ALT)を各地域に配置し、ネイティブな英語に触れながら学ぶ環境の充実を図る。

 「本島に在籍するALTの先生と二次離島の中学校をオンラインで結び、英語の授業での生徒のスピーチを評価するといったサポートを行っています。また、ALTの先生の母国の家族や友人と児童生徒がオンラインで国際交流するなど、以前は実現が容易ではなかった取り組みも活発化しています」(藤尾氏)

 教員も英語指導力を向上するため、スキルアップ研修などを定期的に実施している。年に一度、各教員が録画した授業動画を持ち寄り、グループで相互に視聴して協議を行っている。

持ち帰り学習開始をきっかけにICFSを導入

 2022年7月から始まった「端末持ち帰り学習」を機に、五島市は有害サイトへのアクセス制限に対応するため「InterCLASS®Filtering Service(ICFS)」を導入した。また、長崎県は、青少年のネット・電子メディアの遊びや楽しみとしての利用を夜9時までとする「ながさき基準」を定めている。五島市教育委員会はこれに基づき、端末のオンライン使用時間は朝7時から夜9時までとして、フィルタリング制限を設けていた。

 「ところが、運用をスタートして早々に複数の小中学校やPTA連合会などから使用時間延長についての意見が集まり、同年12月初頭には朝の使用開始時間を6時に変更しました。夜の使用時間の延長要望のほうが多いのですが、こちらは現在検討中です」(藤尾氏)

 今後は本島と二次離島で合同授業を実施したり、意見交換の場を設けたりするケースが出てくることを五島市は期待しており、2022年度から運用を開始した「InterClass®Cloud」の活用シーンはますます増えると見込んでいる。

 「高等学校では専門科目の教員が遠隔授業を実施している事例があるため、小中学校でも同様の遠隔授業は十分実現可能です。ただ、始業時間が異なることもあるため、事前の調整は必須と言えるでしょう」(藤尾氏)

学校統廃合前にICT活用で交流を重ねて不安を軽減

 児童生徒数の減少に伴い、五島市教育委員会は2024年4月に、崎山小学校を福江小学校へ、大浜小学校を本山小学校へ、奥浦中学校と崎山中学校を福江中学校に統合する計画だ。「統合前の1年間で、統合される小中学校の児童生徒が統合先の児童生徒とオンライン上で少しでも同じ時間を共有することで、事前に友人関係を構築し、統合後の不安を低減できるような施策を打っていきたいと考えています」(藤尾氏)

 ICT活用により教育水準の平準化が進みつつある今、五島市はデジタル人材育成などを視野に、さまざまな取り組みを進めていく方針だ。五島市を拠点に世界で活躍する人材を輩出していくことを目指している。

学校統廃合前にICT活用で交流を重ねて不安を軽減

学校統廃合前にICT活用で交流を重ねて不安を軽減

*Google Meet は、Google LLC の商標です。

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