―千葉県―
麗澤中学・高等学校
「教室の『前後』の区別をなくしたい」とのコンセプトでデザインされた、麗澤中学・高等学校の「ICT教室」。 開放感あふれる教室で、Google for Education と、InterCLASS®Cloud のモニタリング機能等を活用する授業の様子を取材した。
麗澤中学・高等学校
〒277-0065 千葉県柏市光ケ丘2丁目1−1
1935年、道徳科学専攻塾として創立。「知識を活かすものは品性と道徳性である」という知徳一体の教育を基本理念とする。グローバル思考で国際社会に貢献できる人材の育成を目指し「言語技術教育」「英語教育」「自分(ゆめ)プロジェクト」に力を入れる。
2014年からの段階的導入を経て
麗澤中学・高等学校では、2019年度から2020年度にかけて高校3年生以外の全生徒に1人1台のChromebookを導入した。
同校がICTの導入に着手したのは2014年のこと。「2020年に生徒1人1台」を掲げ、そこから逆算した計画に沿って段階的に導入を進めてきた。
最初の3年間で力を入れたのは教員のための整備や研修だった。各教室にプロジェクタと実物投影機、AV機器を整備し、Wi-Fiのアクセスポイントを増設した。2017年に教員1人1台のタブレットPCを導入するまでの間、さまざまな研修を実施し、徐々にICTの活用の幅を広げ浸透させていった。
生徒向けには、端末の導入より一足先の2018年に学習ソフトを学年一斉導入。各家庭の端末や個人のスマートフォンを使ってもらい、まずは課題の配信や小テスト、連絡のツールとして使うことで、日常的なICT活用を促した。
そして2020年、当初の計画通り、生徒1人1台端末が実現した。段階的な導入が功を奏し、導入直後から、各授業での活用率は8割にも上るという。
一新した「ICT教室」と「1人1台」で変わる授業
今年度から使用を開始した「ICT教室」は、かつてデスクトップPCがずらりと並んでいたコンピュータ教室2教室のうちの1教室をリニューアルしたものだ。教室の前方・後方いずれにもホワイトボードと大型提示装置が設置されており、教卓はなく、生徒は円卓に自由に着席する。前方に黒板や教卓があるような教室とは異なり、どの位置にいても「授業との距離感」が平等になる印象だ。
「ここでは教室の中央に立って授業を進めることも多い」と話すのは、ICT教室の設計者でもある情報科担当の野口紘司先生。生徒と教師、生徒同士のコミュニケーションを円滑にし、「1人1台」環境を最大限に活用することを狙う。
InterCLASS® Cloudの機能でスムーズなやりとりが可能に
『InterCLASS®Cloud』の生徒画面モニタリング機能を使えば、教師は手元のPCで生徒の作業状況をリアルタイムに把握し、選択した生徒の画面だけを拡大表示したり、複数の生徒の画面を比較表示したりすることもできる。
野口先生は、授業中この教師用画面を常にスクリーンに提示している。
「意見をピックアップして生徒に発表させるときにも、とてもスムーズです。生徒が自分の端末に書いたものがそのまま拡大表示されるので、文字が細かくなるような、文章や数式などの比較にも使うことができます」
従来の授業では発言に消極的な生徒の意見は共有される機会が少なかったが、1人1台端末を活用したこの方法であれば、発言の有無にかかわらず全ての生徒の意見をフラットに共有することができる。また、授業中にチャットで質問を受け付け、その場で回答することもある。
「しばらくは感染症対策として、発言や会話を控えなければならないという事情もあります。その点、ICTをフル活用することで、声を出さなくてもさまざまなコミュニケーションがスムーズになり、授業が充実したものになっていますね」
授業レポート
〜情報科〜
授業はまず、タイピング練習からスタートした。以前から練習の時間は取っていたが、1人1台になってから生徒のタイピング速度は格段に上がったという。
授業の内容に入ると、Googleスライドであらかじめ配信された資料に沿って先生からの説明が進んでいく。この日のテーマは「アルゴリズムとプログラム」の初回。生徒はChromebookと教科書を並べ、野口先生の話に合わせて資料の内容を追いながら、慣れた手つきでスライド上にマーカーを引くなどしていた。
スライドの内容を終えると、ビジュアルプログラミングツール「Blockly Games」を使ったプログラミングの活動が始まった。「プログラミングは『トライ&エラー』の繰り返し。試行錯誤することが大切」という先生からの言葉の通り、周囲と相談しながら課題に取り組む。成功した生徒のプログラムは先生の手元のPCの操作によってスクリーンにそのまま拡大表示されるなど、結果の共有もスムーズだ。
このように、基礎的なスキルアップのためのトレーニング、新しい知識の習得、そしてプログラミングの実践とさまざまなタイプの活動を盛り込んだ授業をスムーズに進行することができるのも、ICT活用の効果といえるだろう。
目指すは「学力向上」と「主体的活用」
同校の教員のICT活用に対する意欲は非常に高く、教員同士の情報共有も活発だ。
野口先生は今後、生徒側から教員に対してICT活用の方法を提案するなど、生徒が主体的に推進するような仕組みが生まれることを望んでいる。
「ICTを活用する一番の目的は、生徒の授業理解をしやすくし、学力を向上させること」と話す野口先生。
授業の活性化や教員の業務効率化を十分に実感できている今、次のステップに向けてさらに踏み込んだICT活用を目指す。