―鹿児島県―
鹿児島女子短期大学
GIGAスクール構想により学校のICT環境整備が進む中で、教員のICT活用指導力向上が急務となっている。大学等の教員養成課程にはどのような学びが求められるのだろうか。
鹿児島女子短期大学
〒890-8565
鹿児島県鹿児島市高麗町6-9
1965年開設。児童教育学科・生活科学科・教養学科の3つの学科と、2つの専攻科から成る。設置者である志學館学園は1907年創立で、現在では大学から幼稚園まで7つの設置校と保育園を付設する総合学園である。
必修科目の「情報機器演習」
鹿児島女子短期大学の児童教育学科は、幼稚園教諭二種免許状・保育士資格を取得する「幼・保コース」と、それに小学校教諭二種免許状を加えた「小・幼・保コース」に分かれる。
渡邉光浩先生が受け持つ「情報機器演習」は、児童教育学科1年生の前期必修科目だ。
機器の操作、キーボードでの入力、アプリケーションの使い方、インターネットでの検索など、情報活用に関して幅広い内容を扱う。
また、特に教育現場で必要となる知識や実践を意識し、著作権についての学習や、実物投影機やタブレットPCの操作体験、フラッシュ型教材の作成体験なども取り入れている。
情報機器に触れる機会を
同校では新型コロナウイルスによる休校期間は短く、ビデオ会議システムを使った対面授業や同時双方向型の授業は行われなかったが、その際に実施した調査によると、家庭にオンライン授業で使えるPC等がある学生は3分の2、自分専用のPCを持つ学生は3分の1で、日常的にPCに触れる機会の少ない学生も多いようだ。
渡邉先生は、「情報機器演習の中でどれだけ情報活用能力を身につけさせられるかが非常に重要」と話す。
例えば、キーボード入力については、日常的に行うことで自然と上達するのが理想的だが、児童教育学科の学生たちにはほとんどその機会がないのが現状だ。中には教育実習の指導案をスマートフォンで作成している学生もいるという。
毎回の授業の中で、キーボード検定サイトでのトレーニングの時間を設けたり、多くの授業では紙に書かせている「授業の振り返り」をWebフォームで行ったりするなど、少しでもキーボードに触れる機会を増やすよう工夫している。
体験を通して得られる気づき
2017年に文部科学省が取りまとめた「教職課程コアカリキュラム」によって、教育実習での情報機器活用が求められるようになった。
今後急速に児童生徒1人1台の環境が整備される中で、教師には、より一層のICT活用指導力が求められることとなる。
各教科の指導法の授業で、教科の内容に関連したICT活用の方法を取り扱ったり、学生自身が模擬授業を行ったりする機会を十分に設けることが望まれるが、授業時数の限られる短期大学ならではの難しさもある。渡邉先生は他の授業の担当教員とも連携し、ICT活用の機会を少しでも増やすよう働きかけている。
必修科目となっている「情報機器演習」は、学生たちにとって、自身の情報活用能力を身につけるだけでなく、教育現場でのICT活用について気づきを得る重要な機会といえる。
実物投影機の実際の操作を体験した授業では「これまで何気なく授業を受けていたが、授業者である先生がどんなことに苦労しているか想像することができた」との感想があがったほか、「学校の授業だけでなく、幼児教育にもICTを活用できそう」というイメージを新たに持った学生もいた。
鹿児島県内では2020年度内に公立の全小中学生に1人1台のタブレットPC等が行き渡るなど、教育実習先の学校にはICT環境が整備されている。
学生たちには、この「情報機器演習」で得た気づきを活かして、教育実習等の場で積極的にICTを活用した実践に挑戦することが期待される。
授業レポート 授業支援システム*1体験
1人1台の端末を使って、学習者が手元の端末で書いた内容が大型提示装置に一覧表示されたり、選択式のアンケート結果がリアルタイムで円グラフ表示されたりする機能を体験した。
また、個別テストに取り組み、回答の正誤が瞬時に学習者本人にフィードバックされること、さらにその結果が、教師の画面でクラスの一覧として把握できることを体験した。
学生の感想
●タブレットを使用することで、先生方は簡単にデータを収集でき、生徒1人1人のデータを見ることもできるので、便利だなと思った。
●タブレットPCやスマホを子供たちが扱うことが当たり前になってきているため、保育者や教育者である私たちが正しい使い方を理解して提供することが大事だと思った。
タブレットPC体験
タブレットPCを自由に触って、様々な学習アプリ・幼児用アプリを体験した。
学生の感想
●説明がなくても楽しめるようにイラストを主としている点、明るい色を使っていてカラフルな点、触って動かして遊べるようにしてある点など、さまざまな工夫がなされていた。
●私が小学生の時は、平行四辺形の説明の際、先生が黒板に紙を貼って説明していたが、アプリで簡単に説明できることを知り、すごく便利だと思った。
フラッシュ型教材*2作成体験
「フラッシュ型教材研修パック」*3を使って、まずは実際の小学校での活用の様子を動画で視聴。その後、渡邉先生による模擬授業で、学生たちが子供役を体験した。
次にフラッシュ型教材の分類「繰り返し教材」「バリエーション教材」「穴埋め教材」について説明があり、それぞれどのような教材が適しているかなどの意見交流を行った。
学生同士の意見交流には、表計算ソフトの共同編集機能を利用。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で始めた方法だが、渡邉先生は「これまでは近くの学生同士が感想を交流して、そのうちの1人が発表するというスタイルでした。この共同編集機能を使うと全員分の感想が共有できるメリットも感じています」と話す。
その後、プレゼンテーションソフトを使って各自でフラッシュ型教材を作成。ペアになり、先生役と子供役を交代しながら自作のフラッシュ型教材を互いに紹介した。
「フラッシュ型教材の良さを伝えるには、実際の活用場面の動画を見るのが一番ですね。活気のある教室の雰囲気が伝わります。プレゼンテーションソフトの操作は2回目でしたが、短時間で良い物が作れていたと思います。模擬授業等も未経験ですので、先生役を体験できたこともよかったと思います」(渡邉先生)
学生の感想
●先生役をして、褒めることが大切と感じた。生徒役をして、答えられたらうれしいし、褒められたらやる気になると思った。
●みんなと楽しくできるし、授業の最初にすると集中力が上がる。答えられなくて恥ずかしいということがないのでいいと思った。
*1 課題の配信や回収、学習者画面の比較提示など、授業を円滑に進め、対話的な学びをサポートするシステム
*2 フラッシュカードのように課題を瞬時に切り替えて表示させるデジタル教材
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