成城大学では、CALL 教室の整備に伴い、2012 年4月に『CaLabo EX』を導入した。『CaLabo EX』を積極的に活用している社会イノベーション学部の石井康毅准教授の授業を訪ね、導入経緯やサポート体制についてもお話を伺った。
成城大学
1950 年設立。建学の理念である個性尊重の教育を通して、「未来社会へ貢献する」大学を目指す。経済学部、文芸学部、法学部、社会イノベーション学部からなり、ゼミを中心とした少人数教育が特徴。
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実際に英語を使う場面を見据えたCALL教室での授業
CALL教室での語学の授業には、マルチメディアや個別学習といったよく知られた点以外にもメリットがあると、石井先生は話す。
「社会イノベーション学部では『使える』英語力の獲得を目指しています。『使える』という言葉にはいろいろな意味が込められていますが、実際に英語を使う場面を意識して学習するということは重要なことです。現代で文章を読み書きする場面はメールやビジネス文書など、パソコン上での作業が圧倒的に多くなっています。デジタルの書式に従って英文を書く訓練は極めて重要なことで、CALL教室での英語の授業はこれにふさわしい機会を提供してくれます」
テスト結果が瞬時にグラフ化され間違いやすい問題が一目瞭然
パソコンの画面に向かい、黙々と解答を打ち込んでいく学生たち。石井先生の授業は毎回、テスト機能を使った自作の小テストから始まる。所定の時間が過ぎるとテストが自動で終了し、学生のモニタには自分の解答の正誤が、そして学生2人の間に1台ずつ置かれた中間モニタには問題ごとの正答率がグラフ化されて表示される。『CaLabo EX』の自動採点/記録機能と学習結果集計機能により、瞬時に集計されたのだ。先生は正答率の低い問題を中心に取り上げ、間違いやすいポイントを丁寧に解説していく。
『CaLabo EX』を使った小テストのメリットについて、石井先生は以下の点を挙げる。
「まず、テストの実施が大変スムーズです。また、結果が瞬時に集計されるので、学生の理解度を的確に知り、それに応じた対応を取ることができます。学生もテストの結果を即座に知ることができ、学習効果も高まります」
ファイル形式の演習用教材で「自分で書く力」を養成する
小テストのあと、授業は本編に入る。石井先生の授業は、英語の4技能の中でも特にライティングに力を入れており、コロケーション(連語)重視のテキストを使って「より英語らしい英語を自分で書く力」を養成している。
学生は事前に課題として英文を作成し提出する。先生はそれに基づいて、多くの学生に共通して見られる誤りを含んだ英文を用意する。授業では、この英文を学生が各自で添削する。自分の英文と比べたり、辞書を参照したり、他の学生と相談したりしながら、英文をパソコン上で添削する。実際に英語を使う場面では、辞書やインターネットを利用しながら、一人でより英語らしい英語を書く必要があることから、このようなスタイルを採用しているという。
一定の添削時間をとった後で、先生はファイルを回収し、学生に口頭で答えさせるかわりに、指名した学生の画面を全員に示しながら解説をする。自分の添削結果は回収されるだけでなく、他の学生にも見られるので、学生は集中して添削に取り組む。
先生と学生との間でやり取りされる演習教材は、すべてファイル形式でデジタル化されている。先生としては管理しやすいが、パソコン画面上での読み書きに不慣れな学生は、自分のファイルや資料などをいつでも印刷することができるように配慮されている。
管理業務にかける労力が減り、教材作成に集中できる
石井先生の授業では、ムービーテレコを使ったリスニングやディクテーション(書き取り)も行っている。学生は、聴き取った内容を小テスト機能を使って配布される解答用フォームに入力する。解答は自動採点され、句読点や細かなスペルミスも含めて学生が自分で誤りに気付くのを助ける。
「『CaLabo EX』を導入したことにより、テストの採点や提出物の管理などの業務にかかる労力が軽減され、その分、教材作成に時間を割くことができるようになったことが大きなメリットだと思います」と石井先生は強調する。
より良い授業、より円滑な業務を可能にする『CaLabo EX』
システム導入時に重視したのが、教材作成や採点に関する機能とグループワークに関する機能だった。メディアネットワークセンターの清水紫さんによると、石井先生をはじめシステム利用に積極的な教員からの要望に適合したのが、『CaLabo EX』だったという。
同センターでは、毎年開講前に教員への説明会を行っている。今回、新システムの導入により、独自のマニュアルを作り替えた。このマニュアルは、基本の機能を中心にまとめたシンプルなもので、デジタル機器が苦手な教員でも受け入れやすいように工夫されたものだ。
清水さんは、「『CaLabo EX』には多くの機能がありますが、最初からすべてを使いこなす必要はないと思います。まずは基本の機能を使用し、慣れてきたら少しずつ手を広げていけばいいと私は考えています」と話す。教員からは予想以上の利用希望があり、語学の授業を中心にCALL教室はフル稼働状態だという。
今後の展開について、石井先生は、「ペアワークやグループワークを組み合わせて、学生にお互いの英文を添削させ、フィードバックをし合うこと(peer review)を紙を使わずにシステム上で簡単に実施したいと考えています。その際、不要な遠慮をしなくていいように、学生同士では匿名にできるような機能があるとより良いと思います」と期待を膨らませる。
また、清水さんは、「『CaLabo EX』は、授業をより良いものにし、先生方が業務をより円滑に進めるためのツールです。使い方次第で利便性はさらに高まると思いますので、今後も現場の要望にできるだけ応えていきたいと思います」と語る。
成城大学では、『CaLabo EX』導入2年目を迎え、さらにその活用の幅を広げていく予定だ。