年次に行う英語・外国語の演習のクラスは、25名程度のクラスで編成されている。また、現在76校の海外提携校を持ち、昨年は外国語学部で208名の学生が留学しており、外国語学部の全学生のうち半数以上の学生が卒業時までに一度は留学を経験するといったように、海外の大学との交流も活発に行われている。
2007年には、フルデジタルCALLシステム『CaLabo EX』を導入し、外国語教育で大いに活用されている。今回は実際に『CaLabo EX』を利用した授業を拝見し、その活用方法についてお話をうかがった。
『CaLabo EX』の動画学習ツールムービーテレコを使用し、各人が一斉にディクテーション!
柳先生のこの日の授業は、英米語学科1年生の『英語演習』。30人程度の少人数制で授業が行われている。
「あと1分でテストをします」――授業が始まるとすぐに、前回の授業の復習テストペーパーが配布される。5分弱という短時間の小テストのため、学生たちも表情が引き締まり、教室は一気に授業モードに切り替わる。復習テストの結果は、授業中に先生が採点し、グラフ化したものをセンターモニターに表示する。グラフにより今回のテストでの自身の成績や、クラスの平均点数などが確認できるようになっているのだ。
次のアクティビティでは、まず、キーとなる新出単語を、学生自身に辞書・電子辞書・インターネット辞書で確認させた後、本日の課題に入る。映像がセンターモニタに出され、学生たちは映像を注視する。
先生の授業では、教科書は使用しない。「1年間を通して授業フォームを固定し、毎授業の教材を変えていきます。教材の難易度やバラエティーに幅を持たせることで、学生に揺さぶりをかけています」と柳先生。事前連絡はせず、予習なしで授業に臨むため、学生の授業に対する緊張感が高まる。
先生は、毎回の授業でムービーテレコを使用し、教材をサーバにアップする。「ムービーテレコから本日のファイルを取り出し、ディクテーションを始めてください」――先生の指示を受け、学生はワークシートに取り組む。
学期末のテストでも、このディクテーションを実際に行うそうで、学生は日頃から力をつけている。
「暗唱テスト」に向けてオリジナルの練習法で体に英語を叩き込む
柳先生の授業の特徴のひとつに、授業の仕上げに、複数の学生がペア/グループで取り組む「暗唱」がある。受講している学生同士が、その日の先生の指示による人数で、ペア/グループを組み、当日の課題文の中で範囲を割り当て、柳先生の前で暗唱するアクティビティだ。
ディクテーションで使用したスクリプト・ペーパーを読み上げ、発音に自信のない箇所をムービーテレコの「再生」「繰り返し」機能により確認し、「録音」機能を使用することで映像の音声と自分の発音を比較する。さらに、身振り手振りを交えて友人と確認する。
リハーサルを完了したグループから、先生の前で「暗唱」を披露する。合格したグループは早抜けできるため、自分のペア/グループに対して連帯責任を負う学生たちは必死。
「『CaLabo EX』を使用した、読み上げのアクティビティはされないのか」という質問を思い切って投げかけてみた。柳先生は、「フェイス・トゥ・フェイスで行うことにより、体に叩き込み、緊張感も高まる。また、学生同士でコミュニケーションを図ることもできるので、このアクティビティは欠かせない」と、先生のこのアクティビティに対する熱意を感じた。
学生の本音を引き出し、コミュニケーションを図るための
「授業アンケート」
また、柳先生は、その日の「授業アンケート」を短い時間で回答できるよう3問程度実施し、結果を学生にフィードバックすることで、先生と学生とのコミュニケーション・ツールとして活用されている。
・自分にとっての難易度
・自分にとってのおもしろさ
・自分だったらこの教材をどんなふうに 使うか
といった内容で、アンケート結果は次の授業でフィードバックされる。前回の授業のフィードバックを拝見したところ、“自分にとってのおもしろさ”には、「ヘッドセットで少しずつ何度もリスニングし、聞き取れた時はうれしかった」「社会問題のディクテーションは少し難しかったが、これが聞き取れれば、海外でのニュースもわかるようになると思った」、“自分だったらこの教材をどんなふうに使うか”には、「ムービーテレコを使用して、シャドーイング、ディクテーションを行うことでネイティブの発音を身につけたい」といった回答が見られた。『CaLabo EX』によって、学生が英語を身につけることの楽しさを体感し、さらなる英語力の向上につなげてもらうことを切に願う。
柳先生の授業はまさに分刻みであっという間の90分間であった。
『CaLabo EX』で個別学習と一斉授業を瞬時にスイッチング
先生は毎年1年生を対象にした授業において『CaLabo EX』を活用されているが、入学したばかりの学生に対して、1コマ90分の長丁場となる大学の授業に個別学習/一斉授業といったメリハリをつけ、「気分転換にも効果的で、学生がよく集中できている」と先生は語る。
また、教卓パソコンから座席の学生の状況がよくわかるため、例えば、ある単語について「他に意味はないか」と質問し、答えに困った学生に対しては、他の学生が利用しているウェブサイトを、「どんな風に調べ学習をしていったらいいのか一緒に見てみようか」と全員のパソコン画面に表示し、解説するといった利用をされている。
また、授業でテキストを使用しない理由について、柳先生はこう説明された。「学生は卒業してから自分で勉強していかないといけないので、自分の周囲にある教材を自分に合わせて使うことを学んでもらいたいと考えています。この教材だったら自分はどんな使い方ができるのかといった視点で周りを見渡すと、テレビでもDVDでもインターネットでも教材は山ほどあります。自分で勉強しないと語学はものになりません。いかにして勉強するかといった、学習プランを作れるような学生になってほしい」
今後については「今は映像音声を見せたあとディクテーションを行っているが、音声だけだと難易度も上がり本当の力をつけることができるのでレベルに合わせて授業に取り入れたい」と熱く語っていただいた。
学生の自学自習能力を培うため、これからも身近にある題材を自在にアレンジできる『CaLabo EX』を利用していただくであろうと確信できた。
TOEIC®テストのリスニング授業に『CaLabo EX』の
ペアワークやムービーテレコを活用したい
市川先生は、英米語学科1年生対象の『TOEIC®テスト・リスニング』を担当されている。この4月に赴任されたばかりで、これからの授業の可能性を広げるために『CaLabo EX』を活用しようとのお考えだ。
「教室に一つだけのスクリーンに提示するよりも、学生二人につき一つ学生から近いところに設置されているセンターモニターに提示するほうが、学生の集中力が圧倒的に高まります」。
この日の先生の授業では、DVD教材を用い、英語の映画をセンターモニターに映し、「日本語字幕→字幕なし→英語字幕」の流れでディクテーションが行われていた。DVD教材はTOEIC®テストとは直接関係しないが、「口語独特の縮約形や消える音などについて耳慣らしをしてもらえれば」という思いで行なっているそう。ただ、「教科書の中で出てきた単語や表現が映画で使われている場合もあり、それに関しては空欄つきのスクリプトを渡して、学生に聞き取らせる学習を行っています」。
先生はこれから「学生の個々人のレベル差が大きいので、各人がしっかりと聞き取れるような授業にしていきたい。一人ひとりの能力に合わせた一斉授業ができるのがCALLシステムの強みだと感じているので、今後『CaLabo EX』を活用したい」と話された。先生が毎授業で使用するDVD映画や教材も、ムービーテレコを使用し、授業で使うワンシーンだけを切り取り、リスニングやディクテーションをしたり、字幕付けしてファイルを回収し、課題として提出させることも可能である。自分の音声を録音したり、ビデオ音声との比較もできる。また、今はフェイス・トゥ・フェイスで行っている「ペアレッスン」。先生によると、大変盛り上がるアクティビティとのことだが、こちらも『CaLabo EX』を使用することで、ランダムに抽出してペア組をすることが可能だ。
先生は、前期/後期でTOEIC®テストのスコアを測定している他、学生に対してTOEIC®テストのスコア以外にも、「映画を見たり音楽を聴くことで、普段からどんどん積極的に英語に触れてほしい」と望んでおられた。
2名の先生方にお話を伺う中で共通していたのが、「学生に自分から学習に取り組むようになって欲しい」という学生の自学自習性を育む思い。「与えられる勉強は高校で終わり」というのはよく聞くフレーズではあるが、学生の自学自習の育成に日々対峙されている先生方だからこそ、『CaLabo EX』の新たな可能性を切り開いておられると感じた。