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2011年3月、3キャンパス5学部に、合わせて7つのCALL教室を設け、『CaLabo EX』を導入した関東学院大学。全キャンパス統一で同一システムを選定、導入したことで、運用面では大きなメリットがあったという。今回は、経済学部の2つの授業を拝見し、システムを活用されている3名の先生方にお話をうかがった。
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英語ニュースにアテレコし、互いの作品を聴き、評価する
まず見せていただいたのが、原田祐貨教授が担当する経済学部1年生の中級クラスの授業。この日は秋学期最後の授業ということで、これまで練習を積んできた英文音読の音声を録音し、提出するという課題に取り組む。スクリプトは実際の英語ニュースTV番組の一幕。5つあるスクリプトからあらかじめ1つを選び、くり返し聴いてはシャドーイングをする練習を行ってきた。今回は、「早読み」からスタート。3分間でスクリプトを何度読めるかをペアでカウントし合い、読み間違った箇所や詰まった箇所をチェックしていく。さらに、「ムービーテレコ」を使ってニュースの動画を流し、元の音声の波形と自分の音声の波形を見比べながら音読練習をくり返す。ネイティブ・スピーカーのスピードでテンポ良く読み、さらに抑揚をつけるのはなかなか難しいようだ。
慣れてきたら、最終段階へと進む。消音した動画に自分の音声を重ねてアテレコし、まるで自分がアナウンサーになって英語のニュースを読んでいるかのような画像を作成するのだ。満足の行く作品ができたらLMSの掲示板にアップする。データを先生の手元に回収せずに掲示板に上げるのは、クラス全員がお互いの作品を聴いて評価できるようにするためだ。最後はクラスメイトの作品を聴き合い、LMS上に5段階で評価を入力する。
原田先生に、システムの活用状況について伺った。「授業では『ムービーテレコ』やLMSをよく使っています。インターネットにもすぐにアクセスできるので、最新のニュースを教材にできるのもいいですね。さらに、オンラインでできるオリジナルの補習教材を作成して学生に課題として出しているのですが、学習管理システムで答案チェックや個人の進捗状況確認が行えるので大変便利です」
原田先生の授業を1年間受講した学生に話を聞くと、「音声だけではなく画像があることで、スムーズに頭に入ってくるように感じました。CALL教室での授業は楽しいので、来年度以降もぜひ受講したいと考えています」と答えてくれた。「春学期の最初と秋学期の最後に録音した自分の音声を聴き比べると、その伸びを実感できると思います。これだけ話せるようになった、発音がうまくなったと達成感を得ることで、次へのモチベーションになると期待しています」と原田先生は話す。
自身の授業計画に基づきシステムを補助的に導入
続いて見せていただいたのは、経済学部の橋本健広准教授が担当する「実用英語(文法)」の授業。この日は、テキストに基づき、道順の説明方法、位置・方向の表現方法を学ぶ。一般的な表現を全員で確認した後、ダイアログの音声ファイルが配付され、個々にシャドーイングの練習をする。さらに、道順説明のペアワークを行うのだが、ランダムに組まれた遠隔ペアのため、ジェスチャーやテキストの地図を使えない状況での説明になる。応用として、地図上にない場所へ案内するアクティビティも行い、最後はチャットを使って書き言葉で道順説明を行い、この日の授業は終了した。ちなみに、このチャットのシステムは、前出の原田先生が構築したものだ。教員間でも「良いものは共有する」という体制ができているという。
橋本先生はCALL教室の活用法についてこう語る。「パソコンやシステムというのは、あくまでもツールだと考えています。『(授業で)やりたいこと』があり、それをより良いものにしていくため、学生がより受け入れやすいものにするために、補助的に取り入れるものだと思うのです。CALLには、学生がやる気になる、リスニング力をつけやすい、出席管理やファイルの一斉送信が可能、といったメリットがありますが、まずは教員が授業の軸をしっかりと作る必要があると思います」
授業にメリハリがつき学生の視野を広げられる
さらに、文学部の本村浩二教授にお話をうかがった。「私の授業では、学生が好きな映画や音楽を教材にすることも多いです。その際には、『ムービーテレコ』を使って映画のワンシーンを見せ、リスニング、書き取り、シャドーイングなどさまざまなアクティビティをさせています。また、無料で使える英語学習ページを紹介したり、楽しく読めるショートストーリーを探したりと、インターネットはかなり活用しています。システムをうまく使うことで、授業にメリハリがつきますし、学生の視野を広げることもできると感じています」
本村先生は、毎回の小テストはチエルのe-Learningシステム『eNetLibe』を使い、中間・期末試験はペーパーで行っているという。「CALLというのは大変便利ですが、シチュエーションに合わせて使い分けることが重要だと思います。例えば学生が淡々と課題をこなすというように、システムに任せっきりにするのではなく、教員がしっかりとかかわらないといけないと思います。いろんな機能があるので、今後も継続的に勉強して主体的に活用していきたいと考えています」
CALLシステム導入から1年を迎え、関東学院大学ではさらなる進展をめざして情報共有やサポート体制の強化に努めている。同大の今後の取り組みに期待が集まっている。