多摩大学目黒中学高等学校は、パソコン教室を「情報」の授業のほかに放課後e-Learningの教室として開放している。同校では、そのパソコン教室のパソコンを新機種に入れ替えるのに伴い、2010年夏に『CaLabo LX』を導入した。それから1年。『CaLabo LX』は授業支援システムの名の通り、情報担当の先生方の「アシスタント代わり」を務め、その存在価値を大いに高めている。「情報」の授業を担当する眞嶋あき子先生と石川智啓先生にお話をうかがった。
「タイマー制御」で「操作ロック」し公平感のなかでテストを実施
「おはようございます」と次々に生徒たちがパソコン教室に入り、出席番号順に着席する。チャイムが鳴ると、眞嶋先生は出欠を取ることはせず、生徒のパソコンを一斉起動し、教員用モニタの画面上で個々のログイン状況を確認して授業を始めた。
「限られた50分間の授業時間をフルに活用したいので、できる限り、授業内容以外のことに時間を割かれたくないのです。たとえば出席一つをとっても、呼称して確認するより、ログイン人数とクラスの在籍人数とで、その日の欠席者を確認します。生徒は出席番号順に着席しているので、誰が欠席しているかをモニタ上で確認できるのです」と眞嶋先生は話す。
冒頭10分間はタイピングテストの時間だ。静寂の訪れた教室で、生徒たちはWordを開き、黙々とキーボードを叩く。10分が経過すると、生徒のパソコンにロックがかかり、それ以上の入力ができなくなる。『CaLabo LX』の「タイマー制御」機能を活用し、「操作ロック」をかけているのだ。生徒たちは各自で、入力できたところまでをプリントして保存し、LANでつながった共有フォルダにタイピングしたWordファイルを先生に提出する。
「わからないことがある人は、席番号を言って」と眞嶋先生。次々と、生徒が挙手し、席番号を告げる。すると、眞嶋先生は生徒の席へ足を運ぶことなく、自身のモニタからリモート操作して、生徒のファイルを開き、プリントしたり、保存したりする。授業はそうして滞ることなく、スムーズに流れていく。
「40人の生徒がいれば、つまずく箇所はそれぞれ違います。タイピングテストの後は、その日、与えられた課題に各自が自分のペースで取り組む時間としていますが、質問のある場合は、そのつど挙手し、個別に対応しています」
パソコンでのインターネット検索には慣れていても、WordやExcel、Powerpointといったソフトを使うことにはまだ不慣れな生徒たち。だが、「もっと上手に使えるようになりたい」「もっとパソコンに触れていたい」という意欲は高い。そこで、同校では昼休みや放課後にパソコン教室を開放して、生徒がパソコンを使った学習ができる機会を設けているという。
『CaLabo LX』の導入前は、世代の古いパソコンだったため、動作が遅く、生徒もストレスを感じ、学習にも支障があった。だが、最新OSを搭載したパソコンに入れ替えたことで、動作が速くなり、生徒はやりたいと思うことを実現できるようになった。さらに、生徒自身が画面に集中して先生の操作の仕方を見ることができることから、理解度が高まったという。
「私が生徒のパソコンでマウス操作していると、生徒は自分がやった気になってしまい、真の理解ができていなかったようです。でも、『CaLabo LX』を導入して私が生徒の元へ出向くことなく、リモート操作できるようになったので、生徒は自分のモニタに集中して、私の操作の仕方を見ることもでき、理解度がグンと高まっているのを感じます」
モニタリング機能があることも、生徒の緊張感を持続するのに役立っている。「今はみんな、Wordを開いて作業しているはずの時間なのに、誰かしら、インターネット画面を開いている人がいるわね、というと、違うことをしていた生徒は慌てて授業に集中するようになります。そうして、先生が実際に回らなくても、見られているんだ、と意識するようになりました」と眞嶋先生は『CaLabo LX』を導入してもたらされた効果を述べた。
事前準備した資料を「一斉送信」して説明する
同じく高校2年生の「情報」を担当する石川先生の授業も訪ねた。眞嶋先生同様に、冒頭はタイピングの時間に充てられていた。新聞記事を抜粋したプリントを配布され、5分間でどれだけの文字を入力できるかを記録する。この日の記事は「ネットで名誉棄損や著作権侵害使用の携帯特定容易に」と題されたもの。単なる入力作業ではなく、入力を通じて、情報モラルに関連する記事に触れる機会にもなっている。
5分間経過した後には、タイマー制御でロックがかかる。生徒たちは入力文字数をカウントし、個々が所有する記録表にその日の文字数を記録する。そして、提出した記録表から、石川先生は生徒の上達度を確認している。
タイピングテストを終えると、作品制作の時間に。生徒たちは、修学旅行のレポート作成に取り組んでいた。文字のサイズやレイアウトデザイン、写真の配置など、さまざまなことに注意を配りながら、「読み手が読みやすいレポート」とは何かを考える。生徒が操作の仕方がわからなければ、石川先生は自身の画面を「一斉送信」機能を使って配信して説明する。そして、眞嶋先生とは対照的に、教室内をぐるぐると動き回り、生徒一人ひとりの進捗具合も確認する。
「心がけているのは、一方的な授業にしないことです。事前準備した資料を一斉送信し、パソコン操作やソフトの機能などを初めに説明したら、あとは生徒自身が考えて作るようにしています。作品づくりにかける時間は全生徒が同じであるように、自宅への持ち帰り作業などは一切させません。一定の時間内で、どれだけ完成させ、相手に伝わる作品をつくれたかを評価しています」
ときには、パソコン操作の得意な生徒や、デザインの得意な生徒が、友達にアドバイスしている姿も見受けられる。石川先生は、生徒同士の学び合いも大切にしているのだ。
「もしできるなら、カメラ機能が付随して、Skypeなどを通じて国内外の高校生と交流できたら」と話す石川先生。「校内の先生方で共有できるサイトを設けて、教材をアップロードし、欠席した生徒が自由にダウンロードできるような仕組みもほしい」と希望している。
パソコンに慣れ親しみ、使いこなせるようになってほしい
『情報』を教えるようになって10年が経過した眞嶋先生は「情報の授業で、実務に則した技術を習得することが大切」だと考えている。「パソコンがあるのが当たり前の時代になった現在は、ソフトを使いこなせる力をつけることが求められているのです。理論を教えるより、実技を通じてパソコンに慣れ親しみ、使うことの楽しさを知ってほしいとの思いで指導しています。生徒たちは週1回の情報の授業を楽しみにしています。だからこそ、できるだけ長くパソコンに触れさせてあげたいのです。そのためにも、授業内容以外のことや、トラブル対処などに時間を割かれてはもったいないですよね。『CaLabo LX』を導入して、アシスタントがほしいという考えはなくなりました。『CaLabo LX』はまさに、アシスタント代わりになる存在として活躍してくれています」と話す。
ネイティブの先生も使いやすく、英語の授業でも大活躍
「現在、本校では、特に『英語』に力を入れています。英語の授業でも『CaLabo LX』を活用しています。e-Learning教材をブラウザーで一斉起動しますが、生徒が操作方法がわからないとき、教員側でリモート操作できるので便利ですね。画面を英語表記に切り替えられるのも、外国人教員には使いやすいです。モニタリング機能を使って、生徒の学習状況を把握することもでき、たとえばEメール作成の活動をする際には、個々が書いた英文を、画面を見ながら一緒に間違いを正すことができるので、指導がしやすいです」
管理者にとってサポート窓口を一元化できること、
ユーザにとって簡易な操作が導入の決め手になる
『CaLabo LX』導入にあたり、システム管理を担当する片山孝司さんにもお話をうかがった。
「パソコンの新機種への入れ替えにあたり、授業支援システムの導入の要望を情報担当眞嶋らから受け、複数の業者さんにシステムの説明をしていただきましたが、チエルさんの商品は、使用経験があり、使いやすさを実感していました。機能面やサポート面など、総合的に判断して、『CaLabo LX』の導入を眞嶋や石川に提案し、実際にデモ実演していただき、先生方も授業での使用イメージが湧いたということで決定しました」
同校では『CaLabo LX』だけでなく、Webフィルタリングソフト『InterSafe plus』や、システムリカバリソフト『WinKeeper』、統合マネジメントシステム『InterMANAGER』もパッケージで導入した。
「システム管理者として、各ソフトのサポート窓口が一元化されているのも導入の決め手になりました。管理者が私一人しかいない環境ですので、不在のときにトラブルが発生した場合、サポート窓口がそれぞれ違うと、連絡を取るのも煩わしくなりがちですよね」
ICT教育の重要性が高まるなか、パソコン環境を整備するという課題により良い方向性を生み出せたことに、片山さんは安堵している。
「環境を整備してもユーザに受け入れられなければ何も意味をなしません。そういった意味では今回導入した『CaLabo LX』は、大いに貢献してくれました。今後は、現在もパソコン教室で行っているe-Learningについてさらに向上させたいですね」