―茨城県―
筑波大学
はきはきとしっかりした英語で自身の意見を発信する学生の姿が多く見られる筑波大学1年生を対象とした英語プレゼンテーションの授業。グローバル化の中、これから社会で活躍せんとする学生に求められる英語での発信力。その力を育む同授業では、語学学習支援システム『CaLabo®MX』を活用した発音練習が“アクセント”となっているという。
筑波大学
〒305-8577 茨城県つくば市天王台1-1-1
世界屈指の研究学園都市「つくば」から、日本をリードし、かつ国際社会に革新をもたらすべく躍進を続ける筑波大学。世界各国から教員、学生が集結する国際色豊かな環境のもと、国境を越えて活躍できるグローバル人材の育成が進められている。
ゲーム感覚で真剣味アップ
リアルタイム評価の発音矯正
師走の青空を突き刺すかのようにそびえる筑波山を望む教室が、真剣に英語の発音練習を行う学生の声で満たされていた。2023年12月22日、筑波大学で、同大学のグローバルコミュニケーション教育センター(CEGLOC)に所属する小野雄一教授が実施した、1年生向け授業「English Presentation Skills」の中の一幕だ。
学生たちが向かうのは、語学学習支援システム『CaLabo®MX』を起動させたパソコン。画面上には、授業の冒頭に全員で視聴した海外メディアのドキュメンタリー映像で使われていた英語表現が表示され、それを正しい発音で読み上げるというのがミッションだ。
学生がマイクに向かって音読すると、その音声の波形が画面上に現れる。即座に『CaLabo®MX』が学生の発音・イントネーション、アクセント、タイミングなどを総合的に分析して、4段階で発音に対する評価を下す。判定は厳しく、小野先生が設定した3分間の制限時間で何度もトライを繰り返し、最高評価の「EXCELLENT」を目指す。高評価を取ろうとするゲーム的な感覚もあるためか、誰もが真剣に発音を試行錯誤する。
潜在的な願望に働きかけ発音指導で学習に前向きに
本授業は英語でのプレゼンテーション演習が主目的であり、この発音練習の後には、メイン課題として2分間の英語スピーチが用意されていた。ただ小野先生はあえて自身の受け持つ授業中には、同様の発音練習の時間を設けるようにしているという。
発音は、読み・書き・リスニングの学習が重視されがちになる半面、どうしても手薄になる傾向がある。対して小野先生はこれまで数々の学校で教壇に立った経験から、授業で発音指導を重視する理由があると話す。「英語学習者は誰しも良い発音で英語を話したいとの潜在的願望があると思います。発音がうまくなれば、英語を学習することに前向きになれるでしょう。特に英語に自信がない生徒の多い学校で教えていた時に、発音指導をきっかけにクラスの学習態度が引き締まった場面を何度か経験しています」
『CaLabo®MX』の自由度は筑波大の学風にフィット
もともと筑波大学では、新型コロナウイルス禍で自宅学習でも教室で受けるような臨場感のある授業を提供したいとの思惑で『CaLabo®MX』の導入に踏み切っていたが、前述のような考えを持つ小野先生は、当初から同システムの発音学習機能に注目していたと明かす。
「語学の読み、書き、会話の学習を支援するコンテンツは豊富にありますが、発音やディクテーションといった音声系の練習機会を、ゲーム性もあるリアルタイムのフィードバック機能とともに提供する『CaLabo®MX』のようなシステムはいまだ希少です。なおMALL型のため、授業中と同じ内容を学生が自宅で学習することもできるので、授業計画のアクセント的に同システムを使った発音矯正やディクテーションを行う機会を設ければ、学生が自宅でも発音練習をするようになるのではないか。シームレスに英語の発音練習を行う環境が生まれるのではないかと期待して『CaLabo®MX』を活用するようになりました」
「ただ、課題として提出させるなど、『CaLabo®MX』での学習を学生に強制することはありません。辞書やノートと同じように、自分に必要だと思ったら使ってほしいというスタンスで活用しています」(小野先生)
他方、小野先生は発音矯正以外の機能についても触れ、例えば先生がアップロードした英語の教材を、学生がシンプルにテキストとして表示して読むことはもちろん、リスニング、シャドーイング、リピートなど、多様な方法でインプットできる点は「筑波大学に合っているのではないか」と語る。
「一人ひとりが主導権を持ち、多種多様な学びのスタイルから自身に最適な学習方法を選択しているのが筑波大学の学生です。学び方を選択できるという自由度の高さは、学風に合っていると言えるでしょう。講師側としても、ニュース映像やネット上の動画など生きた英語素材を使うことが多いので、音声データとテキストさえ用意すれば、『CaLabo®MX』上で学生にさまざまな学習方法で学んでもらえる教材が簡単に作れる点も嬉しいポイントです」(小野先生)
小野先生は、生成AIといった技術が普及する中で、学生が自宅で準備する英文エッセイなどのクオリティが目を見張るレベルで向上していると明かしながら、「人と人の間でのコミュニケーションの中で、その場で思考した自身の考えを発信する能力を身に付けさせることが、今後の英語教育のキーポイントになっていくでしょう」と展望する。
一方で、「新たな技術を使って語学力を高めていくことはむしろ歓迎すべき動きです。学生も教員も、生成AIや『CaLabo®MX』のような可能性を広げる技術に対して、まずは『一回使ってみよう』という姿勢を持つことが大切だと思います」と笑みをこぼす。