Case Studies

利用者目線の扱いやすい操作パネルでPC教室のアップデートを推進

―島根県―
島根県教育庁 教育施設課

BYOD端末の普及でPC教室削減の動きもある中、島根県教育庁は県立高等学校のPC教室に授業支援システムと画像転送システムを導入し、アップデートを図る。PC教室の機能拡充と具体的な活用事例について、同庁と「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」の1校である県立出雲商業高等学校に聞いた。

 利用者目線の扱いやすい操作パネルでPC教室のアップデートを推進
島根県教育庁 教育施設課

島根県教育庁 教育施設課
〒690-8502
島根県松江市殿町1番地
(県庁分庁舎)

高精細画像・映像を一斉に転送できる

 中国地方の北部に位置し、東西に細く延びる県土を持つ島根県は、出雲大社や石見銀山、国宝五城の一つである松江城などで有名だ。県立学校は47校あり、生徒数は約1万5000人に上る。

 情報化が急激に進み、高等学校卒業後の進学先や就職先でICTを活用することが日常のものとなっている。「島根県では、2020年に新たな教育指針として『しまね教育魅力化ビジョン』を策定し、学校・家庭・地域・行政が連携・協働して教育施策を推進しています。ICTの利活用に関しては、基礎学力の定着を目指した取り組みの一つとして位置付けており、授業におけるICT機器の効果的な活用を通した情報活用能力などの育成を進めています。高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)によりICT利活用による授業改善を進め、『ICTを活用しアナログの時間をつくることによる対話的な学び』、そして『データを収集・分析することによる効果的な学び』が実現できるよう、環境の整備に力を入れています」と島根県教育庁 教育施設課 施設整備第二係 主任の白岩泰隆氏は述べる。

 県立高等学校のICT化の対象の一つがPC教室だ。多くの学校ではおよそ6年ごとに設備内容を更新しており、一部の県立高等学校には授業支援システム『CaLabo® LX』(キャラボ エルエックス)とハードウェア画像転送システム『S600-OP』(エス600オーピー)が導入されている。

 『CaLabo®LX』は、ドラッグ&ドロップで教材を配布したり、ワンクリックで先生画面を転送したりできるほか、学習者パソコン画面のモニタリングや操作ロック、パソコン電源の一斉管理などPC教室での授業運営や協働学習に役立つ機能を備えている。『S600-OP』は、4K UHD(ウルトラハイビジョン)の高精細画像を転送できるシステムで、PC教室やCALL教室などの中間モニタシステムのほか、アクティブラーニング教室のプレゼンセレクターとしても利用可能だ。

 『CaLabo®LX』と『S600-OP』を導入している島根県立出雲商業高等学校は、「情報処理」「ソフトウェア活用」「ネットワーク管理」などの科目を中心に、WordやExcel、PowerPointといったMicrosoft Officeの使い方を学習する授業が多い。同校 情報処理科主任 教諭の永田亮先生は「当校のPC教室には、生徒側の2席の間に1台の中間モニタが設置されており、先生の実演を転送するかたちで授業を展開しています。例えば、クリエイティブ系のツール・ソフトウェアの実習では、先生のマウスの操作過程が高精細画像ではっきり確認できるので、生徒はその場で真似しやすい。先生の説明を聞きながら自分の手を動かしますので、ビジネスアプリケーションの実習に適していると思います」と語る。

 昨今は、ソフトウェアコンソールだけのシステムも多いが、学校現場において授業で使用する場合、ソフトをいちいち立ち上げて実行するのはワンテンポ遅く、少なからず時間を取られてしまうのが難点と語る先生もいる。その点、『CaLabo®LX』と『S600-OP』のハードウェア型の操作パネルはボタンが大きく扱いやすい上、ワンクリックで簡単に操作を実行できる。 

 「『パソコンにログイン後、ソフトが立ち上がっていなくてもすぐに画面を転送したい』『今日はパソコンを使わないけれど、中間モニタは使いたい』というケースも多々あり、画面転送や操作ロックなどの基本機能は物理的なボタンで操作できるのが非常にありがたいです。特にPC教室では、先生側のPCを操作しつつ、授業を展開し、生徒のPCも制御する必要があるので、少しでも機器の操作を減らして授業に専念したいところ。操作を誤っても『オールキャンセル』ボタンを押せば、すべての操作を取り消せるのも便利で頻繁に使っています」(永田先生)

 近年は、1人1台端末の活用でPC教室を廃止する動きが加速している。しかしながら専門的な科目は大きな画面や高スペックな機器が求められるほか、情報処理の検定試験に向けて特定のOSやソフトを使用することがあるため、出雲商業高等学校では引き続きPC教室を存続させる予定だという。

VRや3Dプリンタなどで文理横断的な学びを目指す

PC教室での教員側PC画面。
PC教室での教員側PC画面。
生徒PCを制御したり、中間モニタに指示を出したりする操作パネルは、シンプルで分かりやすいインターフェースだ。
生徒PCを制御したり、中間モニタに指示を出したりする操作パネルは、シンプルで分かりやすいインターフェースだ。

 出雲商業高等学校は、DXハイスクールの1校に選ばれており、永田先生は「VRや3Dプリンタなど最先端機器を取り入れた授業を展開していきたい」と今後の展望を明かした。

 島根県教育庁でハードウェア機器の整備を推進する白岩氏は、「1人1台端末が普及した今、ICT機器を扱うだけでなく、それを使った情報の収集・加工・応用に力を入れていく必要があると考えます。機器の導入後、それらを利用する先生や生徒ができる限り不自由・不具合を感じないように、利用者目線を忘れずに業務を行うように心がけています。また、DXハイスクールの補助金により導入する機器は各学校の特色や考え方に合わせて、より最新で高スペックなものを検討し、探究的な学び・STEAM教育などの文理横断的な学びの機会の確保、対話的・協働的な学びの充実を図っていきたい」と意気込みを語った。

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