Case Studies

英語の授業の効率性アップと生徒個人に合った指導を実現

―大阪府―
大阪府立都島工業高等学校

大阪府で最も歴史の古い工業高等学校の大阪府立都島工業高等学校は、3年生の約半数が大学などに進学するほか、民間企業や公務員を選ぶ生徒も多い。多様な進路をサポートするため、従来から基礎教養として英語教育に力を入れている。さらに2022年夏にはCaLabo®MXを導入。ICTによる効率的かつ個別最適な授業で、将来の夢の実現へ頑張る生徒を導く。

2025年のリプレースを見据えChromeOS™ Flex を導入
壬生町教育委員会

大阪府立都島工業高等学校
〒534-0015
大阪府大阪市都島区善源寺町1丁目5番64号

1907年(明治40年)創立。工業・理数科学分野の専門的知識・技術を身に付け、将来の技術者・科学者を育てることを教育目標に掲げる。2017年には創立110周年記念式典を実施。3万5000名を超える卒業生は、産業界、学術界、法曹界、芸術界など幅広い分野で活躍。

進学や就職など多様な進路
生徒間の英語力の差は大きい

 大阪府立都島工業高等学校は、機械、機械電気、建築、都市工学、電気電子工学、理数工学の6学科あり、115年以上の歴史を持つ。戦後長らく大阪市立都島工業高等学校だったが、2022年4月に大阪市立の高等学校が府へ移管されたことに伴い、今の校名となった。

 同校は進学率が高い。2023年3月の卒業生342人のうち、約半数の169人が国公立や私立の大学の理工系学部などに進学した。

 「特に推薦入試の場合、ライバルは全国の工業高等学校の生徒というケースが少なくありません。そこで英語力があるとアピールできて大変有利です。本校は一般企業や公務員になる生徒も多く、このような多様な進路をサポートするため従来から英語教育に力を入れています。卒業までに実用英語技能検定(英検)2級取得を呼びかけており、運営協会から多数受検している団体に贈られる奨励賞もいただいています」(都島工業高等学校 校長の大西忠典先生)

 大学進学率の高い同校だが、実は、高校1年生時点から進学希望者が多いわけではない。先輩の進路や同級生が勉強に打ち込む姿に触れ、学年が上がるごとに進学を検討する生徒が増えるという。そのため、生徒間の学習理解度には個人差が見られる。中でも英語力はバラつきが大きく、聞く・読む・話す・書くについて一人ひとりにキメ細かく指導するのは難しかった。

 「友人の前で英語を口にすること自体が恥ずかしい生徒がいます。以前の音読テストは、廊下に一人ずつ呼び出し読ませていました。入れ替え時間も含めると、30人クラスでは45分授業の1回では終わりません。テストを受けている生徒以外には課題を与えていますが、分からない箇所をすぐに私が教えるのは難しい。授業の効率性アップと生徒個人に合った指導の実現は長年の課題でした」(都島工業高等学校 英語科の荒木靖子先生)

都島工業高等学校の2022年度の英語カリキュラム
都島工業高等学校の2022年度の英語カリキュラム

不要な母音を省略し、単語の音のつながりを意識するように

 大阪府では、公立の小学校・中学校・高等学校に1人1台端末を配備している。英語学習に関しては、1人1台端末環境を活かした個別最適な学びを実行していく一環として2022年8月、CALL教室を持つ都島工業高等学校など15校にCaLabo®MXを導入した。

 初めてCaLabo®MXを使った日のことを荒木先生は今でもよく覚えている。「ちょうどCALL教室をリニューアルしたタイミングだったんです。ピカピカの机にまっさらなヘッドセット、そして新しい学習支援システムのCaLabo®MXに生徒は『うわーっ』と声を上げて。操作方法を説明した後、生徒に自分の声で録音でき、それをAI(人工知能)が自動採点してくれるシャドーイング機能を使わせました。画面に点数がバンって表示されるのが子供たちはうれしい。70点以上で合格と言いましたが、『96点だった!』と画面をわざわざ見せる子も。普段の授業は受け身の生徒が夢中で英語を吹き込む姿を見て驚きました」(荒木先生)

 2022年度の同校の英語科カリキュラムは上の表のとおり。CaLabo®MXは、主に2年生のコミュニケーション英語Ⅱと英語表現Ⅰで活用した。同校の英語表現Ⅰでは、夏休み前、夏休み明け、年明け1月の計3回、オリジナルの英文によるプレゼンテーションを行うのが恒例だ。CaLabo®MXを使ったプレゼンテーションでは、まず、先生が「サマーバケーション」といったテーマを与え、生徒が Google ドキュメント™ で原稿を制作。Google Classroom 経由で提出された完成原稿をベースに、教員がCaLabo®MXでそれぞれの教材を作成する。

 荒木先生は8月のCaLabo®MX導入前の第1回に比べると、導入後の夏休み明けおよび年明けの第2回および第3回は、生徒の「話す」能力が格段に上がっていると実感したという。

 「例えば、展望台という意味のobservatoryは、以前なら『オブザバトリー』と『ト』や『リ』をはっきり日本語読みしていました。しかしCaLabo®MX導入後は、不要な母音を省略し、単語の音のつながりを意識した読み方の生徒が増えました。生徒も自宅などで繰り返し練習するうちに自信がつくのでしょう。手元のパソコン画面に映っている原稿をチラチラ見ていた視線も、教室全体を見わたすように堂々と前を向くようになりました」(荒木先生)

CaLabo®MXの活用法を先生同士で日常的に情報交換

真新しいCALL教室でCaLabo®MXのシャドーイング機能を活用する生徒。
真新しいCALL教室でCaLabo®MXのシャドーイング機能を活用する生徒。

 CaLabo®MXの導入は、生徒の英語のプレゼンテーション力向上以外にも都島工業高等学校全体にさまざまな変化をもたらした。同校の英語科は7名の教諭と2名の非常勤講師で構成している。ある日、9名の先生のうち3名が体調不良などで突然1週間不在になってしまった。事前の引き継ぎもほとんどできず、残りの英語科の先生は途方にくれたことだろう。

 「偶然ですが、この3名は自分の英語の授業でCaLabo®MXを積極的に活用している先生でした。自習課題などはCaLabo®MXの中に分かりやすく整理されている。生徒のほうも慣れたもので、担当の先生が休みの1週間は自主的にCaLabo®MXでリスニングを勉強したり、単語を覚えたり、シャドーイング機能でスピーチを吹き込んで提出したりしました。翌週教室に戻ってきた先生方は、スムーズに次の授業に進むことができました」(荒木先生)

 自動採点という分かりやすいフィードバック機能を搭載したCaLabo®MXは、「70点以上出るまで練習しよう」など英語学習へのモチベーションを維持しやすい。先生が突然1週間不在というハプニングにも、生徒は慌てたり英語学習の積み重ねを放棄したりせず、自分の理解度に合わせて聞く・読む・話す・書くという4技能をトレーニングできたといえるだろう。

 この光景を見て、それまでCaLabo®MXの授業への活用に慎重だった先生も「これは面白そうだ」と積極的に取り入れるようになった。荒木先生は「今ではほぼすべての英語の授業でCaLabo®MXを活用しています。CaLabo®MXを使った授業の流れや授業外における課題提出、小テストの方法など日常的に情報交換し、より良い活用方法を英語科の先生と非常勤講師みんなで研究しています。もはやCaLabo®MXがない英語の授業は考えられません」と語る。

国際的な舞台で活躍できる技術者や科学者を送り出す

 同校は国際活動にも力を入れており、2013年度にスペインのバルセロナにある職業学校と親書を交わした。2016年度には文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)海外研修旅行として、バルセロナの職業学校に教職員・生徒を派遣し、姉妹校提携を結ぶ。以降、毎年10名程度の生徒を派遣し、課題研究発表などを通じて技術交流に成果を上げた。

 「工業系の高等学校のスクールミッションでは、即戦力の職業人を育成といったフレーズをよく使います。しかし本校の場合、卒業生の半数が大学などに進学する進路実績を踏まえると実情に合わない。私自身は、国際的な舞台でリーダーとして活躍できる技術者や科学者を育てる高等学校を目指しています。その意味でも、海外の人たちとコミュニケーションを図ることができる真の英語力をつけて送り出すのは本校の使命と考えています」(大西先生)

 「進学ができる工業高校」として着実に進路実績を残している都島工業高等学校は、電力系や電鉄系をはじめとした大手企業からの注目度も高まっており、2022年度の同校指定の求人倍率は7・5倍だった。伝統のブランドに甘んじることなく、ICT教育環境を積極的に活用して、「社会に貢献するスペシャリスト(専門技術者)」「複数の分野にまたがるオールラウンダー(複合技術者)」、そして「大学などへの進学」の3つの道を生徒に提供する。

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*「 英検」は、公益財団法人日本英語検定協会の登録商標です。

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