―東京都―
東京都立五日市高等学校
東京都立五日市高等学校は、生徒が英語に触れる機会を意識的に作り、それに向けて語学4技能学習支援システムのCaLabo® MXを活用しながらスピーキング力などを高めている。自分の英語が通じた喜びを、他教科の学びへの意欲や視野を広げていくことにつなげる試みだ。英語教育とCaLabo® MXが引き出す可能性を3回に分けて紹介する連載企画。第2回は、CaLabo® MXを取り入れた英語学習の仕組み作りを紹介する(記事内容は2023年3月1日時点)。
東京都立五日市高等学校
〒190-0164
東京都あきる野市五日市894番地
創立75年。教育ビジョンに「地域貢献」「能力伸長」「人格形成」「未来創造」を掲げ、広い視野を持ちながら新しい社会に対応できる生徒、地域を愛し地域から愛される生徒の育成を目指す。特色あるカリキュラムとして、2年生からマネジメント・アウトドア・アドバンスの3コースに分かれ、生徒の興味関心や希望する進路に応じた教育を行う。
録音から採点まで一人でできる
雪が舞う2023年2月10日、東京都立五日市高等学校の2年生のクラスで、英語4技能学習に特化したクラウド型支援システムのCaLabo® MXを使ったプレゼンテーションの授業が行われていた。「タブレットを開いたらサインインして」。英語科主任教諭の中村俊佑先生の声が響く。生徒は自分で作って登録したスクリプト(シナリオ)をCaLabo® MX経由で提出する。
CaLabo® MXには「聞く」「話す」「読む」「書く」を学習するために最適なさまざまなアクティビティが搭載されている。ノートパソコンやスマートフォンなど持ち運び可能な端末を利用するMALL型のため、CALL教室内でのPCによる授業でも、アクティブラーニングやオンライン授業といったICT学習でも、環境を問わずシームレスにサポートする。自動採点機能では、登録したスクリプトと録音した音声をAI(人工知能)が照合し、自動採点する。これにより、生徒は校内でも自宅でも、スクリプトの作成、登録、録音から採点、間違った箇所の理解まで一人で学習できる。
4月には修学旅行で沖縄を訪れる。空港や観光地には英語があふれ、外国人と会話する機会があるかもしれない。
「英語は単なるコミュニケーションツールとしてだけでなく、生徒が学校や地元以外に目を向けるきっかけ作りに有効と考えます。英語に触れる機会を意識的に作り、そのイベントに向けてCaLabo® MXで語彙力やスピーキング力を上げ、自分の英語が通じたという喜びを味わってほしい。そしてその成功体験が、英語学習に対するモチベーションを上げ、より幅広い視野を獲得していくことにつながると考えています」(中村先生)
スピーキング力で外部に発信
CaLabo® MXでは、生徒が作成したオリジナルの英文を音声ファイル化するレコーディング機能があり、五日市高等学校ではシャドーイングの学習に活用している。その成果を発表する場の一つが、学年ごとに開催している「英語コンテスト」だ。1年生は英語劇と英語スピーチ、2年生は英語プレゼンテーション、3年生はSDGsマイプロジェクトプレゼンテーションを実施。1年間の英語学習の成果を、CaLabo® MXで作成したスクリプトで発表する。
3年生のSDGsマイプロジェクトコンテストプレゼンテーションでは、探究学習と連動し、計7チームに分かれ、地域住民などと協働してプロジェクトを運営していく。例えばグローバルチームは、地域在住の外国人生徒への日本語支援や外国人へのインタビューを通じて、外国人との共生に関する課題を把握。観光目的の外国人向けのおもてなしマップや地域紹介動画の作成などに取り組む。
「生徒が内輪で楽しむものではなく、『相手を楽しませる』『地域を盛り上げる』という外部視点で考えることが重要です。そのためにもCaLabo® MXで培ったスピーキング力で外部に発信するプロセスを重視し、各チーム最低2回は地域のイベントや学校の文化祭、学外のコンテストなどでプレゼンテーションする機会を設ける予定です」(中村先生)
英語学習への前向きな姿勢
英語コンテスト以外にも、五日市高等学校ではCaLabo® MXを活用した授業を増やしている。2年生の探究の授業では、「持続可能な観光」をテーマに「SDGs修学旅行」を実施。校内選考で優秀だった8チームは一般社団法人NEXT TOURISM主催の「観光甲子園」の予選に応募した。うち1チームは、全国546チームのうち20チームが選出される準決勝までコマを進めた。
中村先生は生徒に対し、CaLabo® MXを使って、探究の授業で作成したプレゼンテーションの英語版の作成を課題として出す。生徒が自ら調べ、友人と協働してまとめた内容を英語版にし、スクリプトを登録・音読練習することでスピーキング力を養う。2023年3月には、「SDGs修学旅行」について自分たちがまとめた企画に対し専門家からアドバイスをもらう校外学習を企画。JICA(国際協力機構)の観光分野の知見を持つ外国人研修員と英語で直接コミュニケーションをとる。
「校外学習当日は、自分たちの考えた体験旅行プランを外国人研修員に英語で発表します。CaLabo® MXを用いたシャドーイングやレコーディング練習で音声発信力を磨いた生徒が英語で『伝わった・できた』という感覚を多く持てるようにし、英語学習への前向きな姿勢につなげていきたい」(中村先生)
CaLabo® MXを使って「聞く」「話す」「読む」「書く」のレベル向上を図り、それによって得た達成感を生徒の人間的成長につなげていく――。五日市高等学校の一連の英語教育は、英語のテストで良い点をとるだけにとどまらない、生徒の将来を見据えた試みと言えよう。